Banjar(バンジャール)って聞いたことはありますか?
バリの人達はバンジャールをとても大切にしています。もしバンジャールの中で疎外されたら(いわゆる、村八分)、もうその地域で生きていくことも難しくなります。
村八分になると、冠婚葬祭でバンジャールの協力が得られなくなったり、色々不都合が起きるし、何よりバリ人として不名誉なこと。バリ人はバンジャールの付き合いは大切にしています。
バリ島に住むことを決めたからには、外国人といえども避けては通れないバンジャールとの関わり。私達外国人がバンジャールとうまく付き合うには、何をどう気をつけたらいいのでしょう。
目次
1 バンジャールって何?
バンジャールとは、日本にすると町内会?自治会?のようなもの。でも日本のそれより、もっと強固で強い力を持った組織です。
時には行政の力よりも強い力すら持っています。
1-1 バリ島の県市区町村
バリ島は、バリ州(provinsi Bali )です。その下の機関が、県(kabupaten)又はデンパサールのように、市(kota)です。
バリ島には、1つの市、8つの県があります。
- デンパサール市 州都で行政の中心です。
- バドゥン県 クタやヌサドゥアなどバリ島のビーチリゾートの中心地、空港もここです。
- ギャニャール県 日本人が好きな芸術の街ウブドが有ります。
- タバナン県 棚田で有名なジャテルウィが有ります。
- ジュンブラナ県 ジャワ島をつなぐ港を持ち、国立公園が有ります。
- ブレレン県 昔の州都シンガラジャが有ります。
- カランガセム県 霊峰アグン山が有ります。周辺のヌサペニダ島やギリ3島へアクセスできる、パタンバイもここ。
- バンリ県 キンタマーニ高原やバトゥール湖が有ります。
- クルンクン県 バリ島の歴史を語る上では欠かせません。
県の下が郡のクチャマタン(kecamatan)。これはたくさんあるので省略。
その下が慣習村のデサ(desa)。たくさんありすぎるので省略。
そしてその下がバンジャール(banjar)です。
1-2 バンジャールの起源と組織
バンジャールはバリヒンドゥー教を基礎として、祭事の施行や稲作の灌漑システム(スバック)を維持、管理するするために成立した組織です。
バンジャールの運営は成人の既婚者の男性構成員が行います。
青年部もあります。彼らは17歳になるとバンジャールの一員となり、先輩方の中で冠婚葬祭、祭事などで活動しながら社会性を身につけていくわけです。昔の日本もこんな組織有りましたよね。
そしてPKKという婦人会も有ります。
2 バンジャールの役割
2-1 バンジャール内の治安維持
バリ島に旅行で来た際にお祭り渋滞などに出くわした時、お揃いのバリヒンドゥー教の衣装で、交通整理をしている人を見たことはありませんか?あれはプチャラン(pecerang)というバンジャールやデサの自警団です。
彼らは地域内の治安を守るために活動します。実は警察といえども、バンジャール側が通報しない限り、バンジャール内で起きた揉め事に介入するのは難しいようです。バンジャール内で解決する事がほとんどです。
2-2 住民と行政との橋渡し
バンジャールはバリ社会の最小単位のコミュニティです。
バリ島では住民が州や市、県の行政組織に直接アクセスすることはほとんどありません。
行政側も住民に直接アクセスすることはほとんどありません。全てはバンジャールを通して周知されます。
この辺りが規則や法律の周知徹底が難しい理由かもしれません。
運用がバンジャールによって変わる、ということもあります。
その他バンジャールやデサの役目として、様々な書類の発行もあります。学校の入学手続きやその他の証明書を取るときに必要なドミシリという居住証明書。外国人にとってもKITASの延長の時など、ドミシリは必要です。
これを発行するのはデサですが、バンジャールのサインも必要です。このドミシリ、バリ島の在住外国人にとっての頭痛の種です。
日本のように、誰でも役所に行ってお金を払えばすぐに手に入れられる、というのはバリ島ではムリな話。バンジャールの役員を通してデサで発行してもらうのが一般的だと思います。
コネと口利き。インドネシアでは当たり前。バンジャールを飛ばしてデサに行くと、バンジャールの役員に気を悪くされることもあります。
しかもバンジャールやデサによって、更にその時に発行業務をした人によって値段が変わることも。外国人が多数居住しているバンジャールは、値段が統一されている所もあるようですが、外国人が少ないバンジャールでは法外な値段の所もあります。
私達は無料で取得しましたが、ジャワ島出身のご近所さんは数百円だったそうです。KITASを延長するためには必要な書類なので、家選びの時は所属のバンジャールのことも調べておいたほうがいいと思います。厳しいバンジャールは結構大変ですよ。
2-3 ゴトンロヨン(相互扶助)の中心的役割
ゴトンロヨン(gotong royong)とは、相互扶助のこと。
バリ島のみならずインドネシア全土に共通の考え方です。
バリ島ではバンジャールの清掃活動も、「今からゴトンロヨンだよ」といった具合に、全ての活動はゴトンロヨンと呼ばれます。
社会活動はお互いに助け合って行う、というのがベース。
インドネシアの社会では持つべき者が持たざる者を助ける、というのが基本。
自分のできることで人を助ける、というのが人としての行いだと教えられて育ちます。
国の福祉サービスが充実していないインドネシアでは、国をあてにすることはできないので、自分達のコミュニティは自分達で守る、という意識が強国のいのではないかと思います。
今回のCovid19の流行でも、会社は従業員に、バンジャールは住民に、余裕のある人は個人的にスンバコ(sembako)を配っています。
お金持ちは相応に、貧乏な人は貧者の一灯を、というのがインドネシア人の考え方。
はバリ人も同じです。
インドネシアは、一人で何でもできるような社会構造にまだなっていないとも言えますが、このゴトンロヨンの精神はなくなってほしくないと思います。
ポイント
スンバコとは?
Sembilan(9の) Barang(品物) Pokok(主な)の略で、Sembako(スンバコ)九つの重要な生活必需品という意味です。
インドネシア人は、何かにつけてこのスンバコを贈り合います。
元々、食用油、米、塩、砂糖、牛乳、卵、肉、とうもろこし、灯油でしたが、今は品目は変わっています。
ガスが普及して、灯油コンロは使わなくなったので洗剤に変わったり、コーヒーが追加されたり。
相変わらず略語は多いインドネシア語。
外国人は悩まされます。
2-4 バンジャールに入るとお金がかかる?
もちろん、バンジャールに入るとお金はかかります。日本でも、町内会費や自治会費は有りますよね。
バンジャールによって、そしてバリ人かどうかによってもかかる費用は変わります。
私達の例ですが、引っ越して間もなく入会の時に一時金を払いました。今は廃止されていますが当時はバリ人以外の人だけの月会費も有りました。
そしてバンジャール月会費(ごみ収集も含む)も有りました。今はバンジャールの月会費だけです。
この月会費も外国人だけ高いバンジャールもあります。
外国人だからといって、何で高いお金を払わなければならないんだ!と腹を立てる人もいます。その気持ちもわかります。
でも私達のような外国人は、バンジャールの行事やお役目の戦力にはなれないので、その分は法外な金額でなければお金でご容赦を、と思うことにした方が気が楽です。
3 外国人とバンジャールとの付き合い方
外国人といえども、バンジャールとの付き合いを絶って生活はできません。
バリ人は外国人に寛容なので、表立って疎外することはありませんが、安全に暮らして行くためには良好な関係は必要です。
しかも、バンジャールやデサの書類が必要な手続きも有ります。
日頃からバンジャールとの付き合いは円滑にしておいた方が賢明です。
バンジャールに入った時、私達はバンジャールの行事には必ず顔を出す、ということを決めました。そして、寄付も相場より高めに払うということも決めました。
バンジャールのお寺のオダランというバリヒンドゥー教の祭事も、参加できるか聞いたら、ぜひ一緒にお祈りをしましょう、と言われたのでもちろん参加。第一日曜日の朝の一斉清掃も参加。
戦力になるわけないけど、参加することに意義があると信じて。高齢者のつれあいが行き倒れになっても、すぐに連絡してもらえるように、顔を売ることに精を出しました。
言葉がわからなくても、参加してニコニコしておけばなんとかなります。彼らは外国人なんて鼻から当てにしてません。でもそのおかげで仲良くしてもらって、色々助けてもらっています。
これ、バリ島で生きていく上で大事です。
まとめ
私達は引っ越してすぐ、バンジャールに入会しました。家を探してくれた有能なアシスタントが、何はさておきバンジャールだと教えてくれたから。
バリ島で生活するには切っても切れないバンジャール。煩わしく感じることもありますが、でもこれって、日本の昔と同じなんですよね。
日本は一人でも生活できるように、行政や国のシステムを作りました。
町内会に入らなくてもいいし、煩わしくない生活ができます。もちろん、孤独死などの負の側面もありますが。バリ人を含めたインドネシア人は、歴史的に行政や国を信用していません。
だから、日頃から身近な人達と協力し合うシステムを作ったのだと思います。いざとなっても国は助けてくれない、という意識が地域の結び付きを強固にしています。
日本のとバリ島のどちらががいいとは言えませんが、足して二で割ったら暮らしやすい社会になりそうですね。