2008年にバリ島に移住し、今年で12年が経とうとしています。あっという間の12年。
12年経って、私達のバリ島へのリタイアメント移住は成功だったと確信できるようになりました。
私とつれあいはかなり歳が離れていて、普通結婚すれば楽しく将来設計を考えたりもするのでしょうが、私は中身の濃い人生の時期をすっ飛ばして、そのまま老後の人生を考えざるを得なくなりました。
そうして突きつけられた現実は、特別な技術や資格を持たない私たちは、二人で死ぬまで働き続けないとまともな生活を送れない、というものだったのです。どちらかが働けなくなったらそれで終わり。
その時私の脳裏に浮かんだのは、好きで通っていたバリ島。
そうだバリ島に行けば良いんだ、というたった一つの?解決策だったのです。そしてその考えは、その後移住するまでの10年の間に起こった様々な困難を、ひょいっと乗り越えさせてくれたのです。
目次
1 バリ島に移住する目的を考えてみよう
1-1 経済的理由
入ってくるお金(年金)が決まっているなら、そのお金の価値を上げる方法(物価の安いところで暮らす)を探す。私達がバリ島リタイアメント移住を決めた最大の理由です。
私達が移住した2008年は、まだバリ島の物価は今ほど高くありませんでした。
インドネシアの経済発展、バリ島の不動産バブルによるインフレなどの要因で、物価は当時の1.5倍から3倍、物によってはそれ以上という状況です。
ただ、幸運なことに為替レートの差益で物価の上昇分は吸収されています。
1-2 バリ島が好きだから
これは大事です。経済的理由だけなら、他にも選択肢はあります。好きでもない場所で暮らせるほど、私達世代は若くありません。
その土地を気にいると文化に興味を持ちます。そしてその土地の人と関わりたくなります。人と関わろうとすると、言語にも興味を持つようになります。そうして好循環が起こります。
2 本当に日本での老後は難しいのか、もう一度考えてみよう
2-1終身居住可能な持ち家が有る
- 日本の住居が持ち家で、退職前にローンも完済。
- バリアフリー化などのリフォームも終わっている。もしくは今後バリアフリー化などのリフォームを予定していて、退職金等の老後資金を取り崩さず資金を確保できる。
- 生活費は年金でまかなえる。
このような方はバリ島リタイアメント移住をしても、日本での老後を選択してもまずは安泰です。
2-2持ち家だがバリアフリー対策なども今後必要
- 持ち家ではあるが老後を考えると、建て替えまたはリフォームが必要。
- 資金は退職金や貯蓄を取り崩す必要がある。または住宅ローンが残っている。
- 生活費は年金でまかなえる。
このような方は悩むところです。蓄えの額にもよりますが、日本での老後の生活は、何か不測の事態が起これば立ち行かなくなる可能性も。
バリ島リタイアメント移住も選択肢の一つではないかと思います。物価が高くなったとはいえ、日本での生活費を考えればまだまだ生活費は低く抑えられます。
元気なうちはバリ島で生活費を抑えながらリタイアメント生活を楽しみ、健康に不安が出てくる年代に日本に帰国する。という方法もあると思います。
実際、リタイアメント移住をするにあたって、健康面で不安の出てくる70歳までを区切りとして、それ以降は日本で、という方もいます。
2-3現在賃貸住宅で今後も賃貸住宅の予定
- 持ち家が無い。
- 多少の貯蓄は有るが、家屋を購入するほどではない、または購入してしまうと底をつく。
- 生活費は年金でなんとかまかなえるが、赤字の出る月もあるだろう。
このような方は、日本での老後は厳しいと言わざるを得ません。年金の減額も考えられますし、医療費、税金、公的保険料など、今後も上がり続ける可能性が高い。
将来的にはわかりませんが、日本では高齢者が賃貸住宅に住み続けるのは難しいかもしれません。
こんな方にはリタイアメント移住をお勧めします。バリ島の賃貸住宅の家賃は、日本に比べれば安いです。
基本的な衣食住は、まだまだ安いバリ島。生活費もやり方次第で充分節約できます。
3 何故バリ島を選ぶのかを整理しよう
バリ島リタイアメント移住を決めるにあたってもう一度、なぜバリ島リタイアメント移住なのか、もう一度整理しましょう。
- 老後は年金だけで暮らすのは難しい
- 暖かい国で暮らしたい
- リタイアメントビザ制度がある国を比較検討した結果、インドネシアの条件が自分に合っていた
- もともとバリ島で暮らしたかった
大事なことは、リタイアメント移住ありき、なのか、バリ島移住ありきなのかということ。
バリ島にリタイアメント移住を検討する方は、何度も旅行に来たことがあるリピーターの方が多いと思います。
もし「一度もバリ島に行ったことはないけど、リタイアメント移住が簡単そう」という理由だけでバリ島移住を決めることはやめた方がいいです。
そういう方もたまにいますが、せめて何度かバリ島に足を運んで決めましょう。バリ島が好きでなければ、生活はできません。
4 下調べは入念に
4-1ロングステイをしてみる
調べられることは全て調べ、入念な準備をする。もちろんこれは当たり前です。長年住み慣れた日本を離れて、外国に暮らすことになるのですから。
ただ事前にいくら準備をしても、実際に暮らしてみると思ってもみなかった問題が出てくるのも当たり前。人生思うようにならないのはどこでも同じ。
心配には及びません。みんな通って来た道です。大概のことは何とかなるのがバリ島。出来る限りの準備をしたら後はその時考えましょう。
頭で考えるより体で感じる。ロングステイはとても良い準備になります。
4-2ロングステイの方法は様々
ビザなしでも30日は滞在が可能です。ギリギリだと何かあると困るので、3週間くらいの滞在をお勧めします。
それより長く、と思われる方は、バリ島の空港に着いたら、VOA(Visa on arrival)というビザを取って、30日経過前に、入館事務所で30日延長する。計60日(実質はそれより短くなります)バリ島に滞在できます。
これくらい時間があれば、家探しまでできると思いますし、生活費の試算も可能ですね。
5 日本とバリ島の協力者を確保できるか
5-1 日本にいてもバリ島と繋がることはできる
バリ島リタイアメント移住を成功させるためには、日本とバリ島の双方に協力者が必要です。日本の協力者は家族、親しい友人など、すぐに思いつくかもしれません。
問題は、バリ島の協力者です。
これは私達の例です。移住を決めてからの10年間、諸般の事情で私達はバリ島に行けませんでした。
でも日本にいてもバリ島との距離を縮めることはできます。大事なことは人脈の構築。幸い、地元の大学の医学部に多くのインドネシアの留学生がいたので、ボランティアをしたり、バリ島の学生のホームステイを受け入れたり、日本語を教えたり。
日本にいても常にバリ島の気配は回りに有りました。今でもその人脈は私達の財産です。
常に、インドネシア、バリ島のキーワードにアンテナを張りましょう。インドネシア人は人間関係を大切にします。一人と人間関係を結ぶことができれば、それから広げていくことは案外簡単です。
5-2 退路を断つ危うさ
「家も始末して来たし、もう日本に帰るつもりはありません」
という方がいます。
別にそれでも構わないと思います。それぞれの人生ですから。その決意が、困難を乗り越えさせてくれることもあります。ただ、初めからそう決めつけるのは危険もあります。
準備万端、バリ島に協力者もいる。インドネシア語も勉強した。それでもダメな時はダメなんです。その時帰る所は確保しておきましょう。日本人にとってそこは日本しかありません。
自分の言葉にがんじがらめになっては本末転倒です。私の知人に移住して間も無く、色々なストレスで体調も崩し、日本に一旦帰った人がいます。
その人はもう一度日本でバリ島移住について考え、やはりバリ島に住みたい!と戻って来ました。今は「日本に帰るのが嫌だ」と言っています。
仕切り直しも時には大切です。
6 夫婦のコンセンサスは有るか
夫婦でリタイアメント移住を考えている方もいるでしょう。私達もそうでした。
その時、お互いの移住への思いが同じならうまくいくでしょう。どちらかの思いが強く、一方が弱いと問題です。
例えば、夫は何が何でもバリ島移住。対して妻は、夫がそう言うから仕方なく着いて来た。
バリ島の生活は思うようにはいきません。妻は「本当は来たくなかった。あなたがどうしてもと言うから着いて来ただけ」問題が起こる度、何かにつけてそこへ行き着く。これではうまくいくはずかありません。
せっかく二人で老後まで歩んで来た人生、お互い納得のいくまで検討された方がいいと思います。
7 合法的な滞在をしよう
リタイアメントビザを取らなくても、実質的なリタイアメント移住自体は可能です。インドネシアには最長約半年間滞在できるソシアルブダヤというビザがあります。
ソシアルブダヤビザとは、60日間滞在可能なビザで、現地で30日毎に延長可能で、最大180日間の滞在ができます。(途中インドネシアを出国すると即時失効するので注意が必要です)
そのビザを取得すれば、約半年バリ島にいて、一旦国外に出てまた半年バリ島で生活する、ということもできます。
しかしそれは、ソシアルブダヤビザが創設された意図とは違います。本来の目的はインドネシアの芸術や文化を学ぶことや文化交流を目的としたものです。
私達がバリ島移住を考え始めた時、まだリタイアメントビザの制度は有りませんでした。その時はソシアルブダヤでの移住も考えたことはあります。
でもそれはやっぱり嫌だったのです。損な性分と言われても、正面から堂々と入りたい!
そしてついにインドネシアがリタイアメントビザ制度創設。ついに私たちは裏口からではなく、正面から堂々とインドネシアにリタイアメント移住することができるようになったのです。
合法的な移住は最低条件です。そして外国で暮らすには、その国の法律を遵守しましょう。
自分の身を守るためにも、そして自分たちの行為で他の外国人在住者の方に迷惑をかけないためにも。
8 勇気ある撤退も常に意識しよう
リタイアメント世代は終活のこともそろそろ考え始める年代ですね。そういう方にとって、移住は終活を考えることでもあります。
バリ島に移住を考えている方は、いつまでバリ島で生活するか、ということが終活を考えるスタートになります。
死ぬまでバリ島で暮らす、という方。健康面や生活に不安感を感じるようになったら、日本へ帰る、という方。選択肢は色々です。
もし死ぬまでバリ島で、というならそのための準備も必要です。いざという時のバリ島での協力者は欠かせませんし、医療のことも、日本のご家族との話し合いも必要です。もちろん生活の後始末のことも。
人間いつ何が起こるかは誰にもわかりません。その時に、それまでの自分の言葉や考えに縛られることなく、臨機応変に対処することが最も大切なこと。
帰りたくても帰れない状況になる前に、勇気ある撤退も必要です。
バリ島リタイアメント移住を考えるということは、終活を考えることでもあります。
9「ねばならない」はやめよう
日本人がインドネシア語を話すとき、よく使うのが「ねばならない」。インドネシア語で、harus。私も使いがちです。
バリ島に移住したら、ちょっと「ねばならない」を減らしてみませんか?リタイアメント世代にとって「ねばならない」ことってそれほど多くはありませんから。
第一、インドネシア人に対して「ねばならない」を要求しても虚しいだけ。ここは、郷に入れば郷に従え、で「でもいいか」にしてみませんか?ちょっと楽になりますよ。
10 やっぱりバリ島が好き
バリ島リタイアメント移住にとって、最も重要なことは、バリ島が好きだ、ということに尽きます。
日本のようにいかないのは当たり前。「なんでこんなことに!」という、想像を超えることが起こるバリ島。
「なんでそうなるかな」という、想像を超えることをやらかしてくれるバリ人。
文句を言うことも、愚痴ることも多々ありますが、それはそれ。結局、バリ島が好きだから住み続けていけるわけで。
もしこの気持ちが無くなった時は、帰国の潮時かもしれません。
まとめ
インドネシアは、日本とはインフラも建築も機械も、全てのクオリティが違います。
慣れるまでは毎日何かしらの問題は起きます。その都度日本と比べて、日本ならこうなのになんで、と思う事もあります。ただその思いにとらわれていては生活して行く事はできません。
困った時は周りの人に助けを求めてください。バリの人は困っている人を放っておく事はありません。
人助けは嬉しい事だと子供の頃から教育されています。何も言わなくても彼らの方からやってきて当たり前のように助けてくれる事も多いです。
自分で解決できない事は人に頼る。日本人には苦手なことかもしれないけれど、バリで暮らしていく上では大切な事です。彼らが困っている時にお返しすればいいのです。
そしてもう一つ大切なことを。助けてもらったら自分にできる最高の笑顔で、ありがとう、と言ってください。その何倍の笑顔で、大丈夫、お互い様、と返ってくるはずです。
まずはロングステイでバリの生活を体験してみませんか?本格的なリタイアメント移住を決めるのはそれからでも遅くはありません。