手続の話

知らないと損する!バリ島移住前の国内手続き完全版

リタイアメントビザの手続きや家探しも終われば、もうバリ島移住は目の前。残るは日本国内の手続きです。しかしこの手続き、知らないと損をすることもあるので注意が必要です。

今の日本の法律が制定された当時、今のように仕事や留学で海外で暮らす人は少数派。ましてや老後を海外で暮らすということは、完全に想定外だったと思います。

そのせいか本当に曖昧なことが多い。法律では定められていないことも多々あります。完全に法律が後追いの状態です。だからこそ、知らないと損をする、ということも出てきます。

最近は役所も親切になりましたが、それでも聞かないことまで、積極的に教えてくれるところは少ないです。

納めるべきものはきちんと納め、必要のないものは納めないで済む手続きをする。日本国内での重要な手続きをできるだけ詳しく解説します。

1 非居住者とは

海外在住者が、税金や年金などの手続きをする時によく使われる非居住者という言葉。簡単に説明します。

非居住者というのは税法上の考え方で、判断が難しいのですが、簡単に言うと原則として、日本から一年以上生活の中心(職業など)を海外に移すということです。

海外転出届を出しているかどうか、ではなく課税上の判断になります。

しかし年金だけが収入という人には、富裕層のように日本と海外に収入が有ったり、資産を所有している人に対する、課税のための居住者、非居住者の線引きは意味がないと思います。

ここでは、年金でバリ島移住生活、という話なので、非居住者を海外転出届を出している人、ということで話を進めたいと思います。

1-1 非居住者のメリット

住民税、国民健康保険、介護保険を納める必要がなくなります。

住民税の注意点

住民税は1月1日に住所の有る市区町村に納めます。住民税は前年の収入によって算出されますので、年の途中で海外へ転出したとしても、全額納める義務があります。

例えば2月に海外転出届を出したとしても、その年の住民税は全額納めなければなりません。

住民税の徴収は通常6月なので、それ以前に海外へ転出する場合は、口座引き落としか代理人に納税してもらうことになります。市区町村に確認してください。

国民健康保険の注意点

対して国民健康保険は、年の途中で海外へ転出すると、その日までの保険料を納めれば良いので、海外転出届を提出後清算することになります。こちらも清算金の振り込みなど、市区町村に確認してください。

1-2 非居住者のデメリット

海外で病気やケガをした場合、国民健康保険加入者は帰国してから申請すれば、自己負担3割なので、原則として医療費が7割返ってきます。国民健康保険に加入していない非居住者は全額自己負担です。

日本で同じ治療をした場合の医療費が基準です。必ずしも支払った医療費の7割が返ってくるわけではありません。

2 海外転出届

2-1 海外転出届とは

日本から住民票を抜くことです。海外転出届を出すと、日本の国民健康保険は返納しなければなりません。マイナンバーも消滅します。

住所地の市区町村で、パスポートなど本人確認できるものを持参して届け出ます。受付は2週間前からできます。

 持病のある人は届出の日に注意してください。届出後は医療費は自己負担になります。万一の時は、海外転出届をキャンセルすることもできます。

2-2どれくらいの期間海外に住む時に出すのか?

特に法律で定められているわけではありません。市区町村によって対応はまちまち。原則として、一年以上海外に在住する時は海外転出届を出すのが一般的なようです。

この海外転出届。本来出すべきものですが、出すか出さないかは本人次第、というのが現状です。

2-3 海外転出届を出すべき人と、出さないほうがいい人

海外転出届を出すべき人

すでに年金を受給している人は海外転出届を出した方がいいと思います。

国民年金保険料の支払いが終わっているので、住民税と国民健康保険料の支払いを免れることを考えればメリットだけです。

国民健康保険は、帰国して住民登録をすれば即日保険証が交付されます。

海外転出届を出さない方がいい人

  1. 一年に一度は定期的に帰国の予定のある人
    頻繁に転入、転出をすると、市区町村によっては嫌がられますし手続きも面倒です。
  2. まだ国民年金保険の被保険者の人
    結論から言うと、まだ国民年金保険の被保険者の人、つまり60歳未満の人は海外転出届を出さない方がいいと思います。

どうしてなのか?

貰える年金額を増やす、と言う視点から考えれば、海外転出届を出すか出さないかは、60歳まであと何年かということに尽きます。

日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人(外国人も含まれます)は、厚生年金保険(以下、厚生年金と言う)、国民年金保険(以下、国民年金という)など公的年金に加入が義務付けられています。

ということは60歳未満の人は公的年金被保険者のはずです。海外転出届を出すか出さないかは、受給資格期間と保険料納付済期間の関係で判断するべきです。受給資格期間と保険料納付済期間については、後述します。

海外に住んでいた期間は、合算対象期間(カラ期間)とされ、保険料納付済期間には算入されません(年金額は増えない)が、受給資格期間には算入されます。

任意加入という制度を使って年金保険料を収めることも可能です。その期間はもちろん年金額に反映されます。海外転出届を出せば、年金保険料を納める必要はなくなりますが、年金額も増えることはありません。

しかし、住民票が国内にあって収入が無ければ、免除を申請することにより半額保険料を納めたことになり、年金額にプラスに反映されます。

と、ここまで書いてはみたものの、年金の話は難しいので、例を挙げてみます。

2-4 海外転出届を出した方がいい人の一例

例えば、バリ島にリタイアメント移住する夫婦の妻が、現在50歳だとします。夫は60歳。すでに年金を納め終わっています。

夫は海外転出届を出した方がいいと思います。対して妻は、あと10年国民年金被保険者の期間があります。もし海外転出届を出せば、

  • 任意加入で国民年金保険料を納めて年金額に反映させる。
  • 年金保険料を納める必要がないので(海外在住期間は、合算対象期間になる)納めない。年金額には反映されない。

という選択肢があります。

住民票を日本に残しておくと、

  • 国民年金保険料を納めて、年金額を増やす。
  • 収入が無いので申請免除で国民年金保険料は免除。保険料は払わなくても、半分払ったことになり年金額にプラスされる。

という選択肢があります。

妻が申請免除すれば、保険料は払わなくても、年金額は半分納付したことになってプラスになる、ということです。

住民票を残せば、国民健康保険料は納めなければなりませんが、収入が無いと住民税が非課税なので保険料も安くすみます。

2017年から受給資格期間が10年になったので、ほとんどの人は受給資格があるとは思いますが、ぜひバリ島移住前に社会保険事務所で年金記録をチェックしてください。受給額の試算もできます。

バリ島に移住する人で60歳未満の人は、海外転出届を出すかどうか、もう一度考えてください。

point 年金の受給資格期間と保険料納付済期間

受給資格期間とは、公的年金の被保険者であった期間のこと。簡単に言えば、厚生年金保険、共済年金保険、国民年金保険等、公的年金に加入していた期間です。

現在20歳から60歳未満の人は加入義務があるので、受給資格期間は40年です。その間、保険料の未納期間があっても、受給資格期間には算入されます。

2016年までは25年間必要でした。しかし、何かとずさんな年金制度。昔は加入手続きや年金の種類の変更など、自らしなければ放ったらかしでした。

例えば、結婚前に厚生年金保険に加入していた人が、結婚で退職し専業主婦に。夫がサラリーマンなら、国民年金の第3号被保険者になるはずが、手続きをしなかった(どの年金にも加入しなかった)ため、受給資格期間が足りない、あるいはほとんど年金がもらえない、といった場合も。

国民年金の第3号被保険者は保険料を払う必要がないので、気がつかなかったのです。

当時は自己申請だったため低年金や無年金の人も多く、消えた年金などの問題も絡み、今のような親切な?制度になりました。

2017年の法改正で、受給資格期間は10年になりました。つまり、10年間公的年金の被保険者であれば、公的年金を受給できるということになります。それ以下だと公的年金の受給はできません。現在は受給資格期間の心配はあまりしなくても済むようになりました。

対して、保険料納付済期間はその名の通り、国民年金保険料を支払った期間です。この中には、国民年金保険料の免除期間も含まれます。

収入が無くて保険料を納められなくても、申請免除が認められれば年金が半額受給できます。その他にも、保険料なしはない額に応じて、4分の3免除、半額免除、4分の1免除があります。

3 非居住者の所得税

3-1 租税条約とは

インドネシアと日本は租税条約を締結しています。租税条約とは、主に二重課税を防止するために締結された条約です。

簡単言うと日本で得た収入は、インドネシアと日本のどちらか一方でしか課税されない、と言うことです。これは日本の公的年金にも適用されます。

3-2 租税に関する届出書

すでに年金を受給している人は海外転出届を出した方がいい、と前述しましたが、その後絶対忘れてはいけない手続きがあります。それが租税に関する届出書です。

租税に関する届出書を出す意味とは

普通、日本で公的年金を受給するときは、年齢やさまざまな控除によって税額が抑えられます。

一方、非居住者が公的年金を日本で納税する場合は、雑所得で分離課税されます。控除は基礎控除と雑損控除のみ。配偶者控除や生命保険控除もありません。非居住者の公的年金の所得税は以下の通りです。

令和2年1月1日以後支払われる公的年金の所得税については、支払われる年金の額から5万円(年齢65歳以上の場合は9万5千円)に年金の額に係る月数を乗じた金額を控除した金額に税率を乗じた金額です。

ポイント

65歳未満の場合
源泉徴収税額 ={(年金支給額-5万円×支給月数)}×20.42%

65歳以上の場合
源泉徴収税額 ={(年金支給額-9万5千円×支給月数)}×20.42%

65歳以上で平均的な厚生年金受給額の月額を約15万円とすると、

{(180万円一9万5千円×12ヶ月)}×20.42%=134,970円

月々にすると、11,247円源泉徴収されます。

年金生活でこの金額は痛いです。バリ島での生活費の、光熱費や通信費がまかなえます。そこで解決策。租税に関する届出書を提出しましょう。

租税に関する届出書とは、租税条約に基づき納税場所をインドネシアにするための手続きです。日本での納税は必要ありません。これを出さないと、自動的に日本で課税されます。

「じゃあ、インドネシアで納税することになるんですね?」と聞かれれば理論的にはそうです。ただインドネシアでは、年金に課税することはありません。納税したくてもできないのです。

移住前にインドネシア大使館の財務担当者にも確認しました。答えは、「働いている時に税金や年金は払ったでしょ?だから貰える年金なのに、それに課税したら2回税金を払うことになるでしょ。インドネシアはそんなことはしませんよ」でした。

ちょっと後ろめたい気もしますが、各種物品税も有るし、ビザ代も高いからいいか、と思うようにしています。

租税に関する届出書の提出場所は、社会保険事務所です。税務署でも市区町村役場でもありません。

海外転出届は市区町村役場、租税に関する届出書は社会保険事務所です。この辺りが事をややこしくしているんですけどね。

届出書は日本年金機構のサイトからダウンロードできます。

ダウンロードのページはこちら

私達が手続きした時はこんな親切なシステムはなく、社会保険事務所の窓口でも、「それ、なんですか? 聞いたことない」と追い払われそうになり、激怒したことを思い出します。

今でも知らない窓口担当者もいると思うので、ダウンロードして提出するだけの方がいいかもしれません。

3-3 海外転出届を出した年の確定申告

年の途中で海外転出届を出すと、源泉徴収されている所得税も有りますし、公的年金以外の収入がある人もいると思うので、その年の確定申告が必要になります。

いずれにしても、翌年の確定申告は日本に居ない訳ですから、郵送もしくは代理人に申告してもらうことになります。

この代理人が納税管理人です。納税管理人は一般的に家族がなることが多いですが、友人でも構いません。

海外在住者が日本国内の確定申告や還付金の受領、納税、税金関係の書類の受け取りなどを代理して行う人です。納税管理人届出書を税務署に提出して納税管理人を指定します。

私達も給与所得、公的年金所得があったので、確定申告の必要があったので納税管理人を指定しました。

そこで思いがけないトラブルが。年の途中で海外転出届を出したので、それ以降の年金の支払調書はバリ島に届きました。が、それ以前の源泉徴収票が来ません。

早速、日本年金機構に連絡をして源泉徴収票が届かないのですぐに送ってほしい、と依頼。答えは、「支払調書はもう送りました」だから、支払調書じゃないんだってば!源泉徴収票は請求しないと送って来ないらしい。

日本年金機構、確定申告のことなど全然考えていません。渋々送って貰えることになったはいいのですが、これが来ない。再度連絡すると結果は、まだ送る手続きをしていないとのこと。しかも忘れていたらしい。怒髪天を衝くとはこの事。

「確定申告の期限があるので(還付だったので本当はいつでもいい)間に合わないから、納税管理人に送ってください」と言うと、「個人情報なのでできません」とほざいた。何のための納税管理人。ここで怒りはMAX。

本人が個人情報を指定人に送付しろ、と言ってるのになんでできない!「個人情報を預けた覚えもない。書面も交わしていない。こんな対応では個人情報なんて預けられない。信用できないから、今すぐ私に返して!」もちろん返事は無言。

結局、例外のEMS(本当は普通郵便しか使えないらしい)でバリ島に送って、バリ島からまた納税管理人に送る、という面倒なことになりました。

確定申告が必要な人は、早めに日本年金機構に請求してください。特に納税しなければならない人は要注意。申告期限に間に合わない可能性があります。

4 日本国内の銀行口座

結論はそのまま使い続けても問題はありません。私達がバリ島に移住した頃は海外転出届を出したら、日本の銀行口座は解約しなければならない、というのが原則でした。

これも法律の定めはありません。一年以上海外に住むなら、銀行の資産を全て解約して持っていけ、ということです。前時代的な考えで、全く合理的ではありません。

今でも一部の銀行を除いて、同じ対応のようです。まずは取引のある銀行に問い合わせることをお勧めします。

もし銀行が解約してください、と言ったらどうするか?結論は、銀行にバリ島に移住すると言わなければ良い、です。質問を、あくまでもし海外へ一年以上住むことになったら、で留めておくことです。

私達も悩んで、最後は銀行協会にまで問い合わせました。その時の答えは、「役所から海外転出届のリストが来たり、入管からこの人が日本を出国したと、連絡がある訳じゃないからね」でした。

2021年から、マイナンバーが銀行口座と紐付きになるらしいということですが、そうなるとどう動くかわかりませんが、今のところは口座はそのままで大丈夫です。

5 年金の受け取り方法

5-1 海外の銀行口座で受け取る

年金は海外の口座でも受け取ることができます。インドネシアルピアで銀行口座に入金されます。

年金の支給は、偶数月の15日、15日が土、日曜日、または祝日の場合は前日ですが、海外の銀行口座に振り込みを希望する時は遅れることもあります。

海外の銀行口座に振り込みを希望する人は、日本年金機構に、年金の支払いを受ける者に関する事項、の届出が必要です。

インドネシアの銀行口座の開設は、KITASができてからになるので、その場合は郵送での届け出も可能です。

5-2 日本の銀行口座で受け取る

海外転出届を出しても日本の銀行口座を残しておけば、日本の口座で受け取ることもできます。

これもマイナンバーと銀行口座が紐付きになると変更があるかもしれません。

6 年金受給者は在留届を忘れずに

バリ島で生活を始めたら、忘れずに在留届を出しましょう。在留届は2ヶ月以上滞在する場合に、バリ島ならデンパサール日本総領事館に届け出ます。窓口でもインターネットでも届出ができます。

年金受給者は、毎年誕生月に現況届を出す必要があります。現況届とはいわゆる生存確認ですね。

日本国内では、マイナンバーを日本年金機構に登録していれば、現況届は出す必要がなくなりましたが、海外在住者は必ず提出する必要があります。

日本年金機構から書類が届きますので、総領事館で証明をもらいます。被扶養者がある場合は書類が二枚になるので、契印をお忘れなく。

あとは日本年金機構に郵送するだけです。普通郵便だと少し不安なので、書留方式(EMSなど)をお勧めします。

まとめ

日本は海外在住者のための法整備はまだ遅れています。手続き自体も役所がそれぞれ違ったり、面倒なことも多いです。

海外に移住する人もまだまだレアケース。移住後に日本の役所に問い合わせるのはなかなか大変です。

知らなかった、で損をすることのないように、移住前に日本国内の手続きを漏れなく済ませておきましょう。

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