文化の話

バリ島の宗教は日本と同じ 八百万(やおよろず)の神!

バリ島のキャッチフレーズ、"神々の住む島 、バリ島"。神様ではなく神々。
そうです、バリ島には森羅万象、そして人間が作りし物にも神々が宿ります。
まさに、八百万の神。

インドネシアで暮らしていくのに切っても切れない、宗教という問題。
私達日本人にとって、特に信仰を持っている人以外あまり宗教を意識することはないかもしれません。
でも実はバリ島の宗教観は、私達日本人のそれと驚くほど似ているのです。

山、海、田、稲、井戸、風、木々など精霊信仰と相まってバリ島には神様がいっぱい。
もちろん、悪霊もいます。
善と悪はせめぎ合うけれど勝ち負けはつかず、結果、世の中は善と悪が共存して成り立っているという考え。
祈りは神様にも悪霊にも捧げられます。

そういえば、七福神も色々な宗教の神様な集まりですよね。

1 インドネシアの中でのバリ島の宗教

宗教と政治は話題にしないほうがいい、とは言いますが、インドネシアでは宗教と無縁で生活するのは無理です。様々な申請書類にも宗教の欄があるくらい。

KTP(インドネシア国民のIDカード)にも宗教の記載があります。初対面の人と会えば、宗教は何?という話になります。このようにインドネシアでは、宗教が生活に根付いてます。

インドネシアの宗教は?

インドネシアは国教を持っていません。
イスラム教の国というイメージがありますし、実際国民の大多数はイスラム教徒です。

しかしパンチャシラという、憲法の前文にも書かれている国是の建国5原則で、唯一の信仰と定義されてはいますが特定の宗教を定めてはいません。

唯一神であれば、キリスト教も仏教も尊重されます。よって、信仰によって不利益を被ることはありません。それぞれの宗教の主要な祭日は全て、インドネシアの休日になります。

1-1 バリヒンドゥー教はこうしてできた

イスラム教がインドネシアに入ってくる前は、インドネシアはヒンドゥー教、仏教、土着の原始宗教など、色々な宗教が混在していました。
しかし、マレーシアから渡って来たイスラム教がジャワ島に広まると、ヒンドゥー教は押し出されバリ島とわずかな地域にだけになってしまいました。

その後バリ島の原始宗教と融合して、仏教の影響も受けつつ、今のバリヒンドゥー教の形になったわけです。

ここで、あれっ?と思われた方は鋭い。
唯一神しかダメなら、じゃあ、ヒンドゥー教は多神教だからダメなんじゃない?

そうです。でもパンチャシラが定められた時、インドネシアのヒンドゥー教徒は考えました。

サン・ヒャン・ウィディという神様を唯一神とし、その他の神様は皆その化身であるとしました。これで一件落着。
頭いい!このあたりがインドネシアの寛容さ。細かいことを言いません。形式だけ整ってればOK。

最近ではジャワ島を中心に、定期的にイスラム教保守派の国会議員達がイスラム教を国是とすべし、イスラム教の教えに従った国家の構築を、と求めたりしています。

その影響で数年前、突然お酒の販売が厳しくなったりしたこともあります。当初バリ島も従っていましたが、今は元どおり。あれはなんだったのか、という感じです。

この辺りが、バリ人のいい加減さだとも言われますが、私は少し違うように感じます。バリ人は立場の上からの指示には、理不尽とも思われることにも表立って抗うことはありません。表面上は従順に従います。

その代わり少しずつ自分たちのペースに戻していく。相手が気がついた頃には元に戻っている。かなりの高等技術。上に立つ人間はとてもやりにくいと思います。

1-2 バリヒンドゥー教と日本の宗教との類似点

このバリヒンドゥー教の成り立ち、日本の宗教の成り立ちと似ています。

大陸から渡って来た仏教と、日本の神道や原始宗教と融合したのが今の日本の宗教ですよね。新しいものと昔からあるものを、うまくミックスして新しいオリジナルを作る。

日本人が比較的バリ島に馴染みやすいのは、こういう文化が似ているからかもしれません。

2 日本人として宗教との付き合い方

さて、そんな宗教を大切にしているインドネシア人やバリ人との宗教を通した関わり方は、どうしたらいいでしょう。

私達は宗教がらみの儀式の招待には、必ず参加しました。
相手の尊重しているものには、こちらも敬意を払う、人間付き合いの基本。信仰心の薄い日本人は彼らも誘いやすいみたいです。しかも、外国人が家族の儀式に参加していることは、なぜかバリ人の虚栄心をくすぐるようです。

ただそこにいて失礼にならないようにする。ただそれだけ。日本人はお行儀がいいし、周りの空気も読めるので難しいことはありません。バンジャール同様、参加することに意義がある、わけです。

だからといって、気の進まないお誘いに無理に乗ることはありません。断ったら気を悪くされるかも、と思う必要はありません。適当な理由をつけて、断って大丈夫。

誘う側も礼儀として誘うことも多いですし、断られても気にしません。万一、相手の機嫌を損ねたようなら、そのお誘いには別の意味があったかもしれないので、行かなくて正解です。

断ったからといって機嫌を損ねるバリ人は、少なくとも私は見たことはありません。堅苦しく考えず、誘われたら是非参加してみてください。きっと皆さん喜んで迎えてくれるはずです。

2-1 バリ島は毎日祭日?

バリ島は毎日どこかでウパチャラが執り行われています。
暦によって決められている重要なウパチャラはもちろん、冠婚葬祭、一人一人のウパチャラ、何かあった時に特別に執り行われるウパチャラ。
新型コロナウイルスを収めるためにも行われました。

2-2 バリ島の大きなウパチャラ

バリヒンドゥー教のウパチャラはたくさん有りますが、大きなものでは、日本のお盆に似ているガルンガン(迎え盆)とクニンガン(送り盆)。
先祖の霊を迎えるために、ペンジョールという竹の飾りを立てます。
これは今年の2月のガルンガンの時の我が家のペンジョール。

そして鉄柵の日と呼ばれることもある、バゲルウェシ。鉄や農耕具、バイクや車など、生活に必要な金属製品や機械に感謝を捧げる日。
バイクにもお飾りがつけられます。
そういえば、昔は日本の車にもお正月にしめ縄を飾っていましたよね。
鍛治など関わる職種のカーストの人にとっては重要なウパチャラです。

芸術や学問の神様のサラスワティの日。
サラスワティは日本の七福神の弁財天です。
本や関係のある道具に祈りを捧げ、その日は使いません。本も読んではいけないそう。
日本人なら逆にそういう日こそ、日頃読まない本を読もう、ということになりそうです。

そしてニュピ。
ニュピはサカ暦のバリ島の新年。毎年日にちは変わります。
ニュピはサイレントデイと言われて、朝6時から翌朝6時まで24時間、活動が一切制限されます。外出も禁止。

火を使ってはいけないといわれ、電気は使うことができますが、灯りが家の外に漏れることは禁止です。

テレビもインターネットも24時間遮断されます!
空港も港湾も閉鎖。観光客も従う必要があるので、ホテルからは出られません。
もちろんホテルの前のビーチへも出られません。
ホテル内のレストランは営業していますが、営業時間の短縮があります。
ホテルの部屋から灯りが漏れることも原則禁止。ホテル内も必要最小限度の灯りだけになります。

万一、外出してプチャラン(村ごとの自警団)に見つかると捕まります。
地域によって厳しさが違います。デンパサールは厳しいですが、ウブドは結構ゆるい気がします。農家の人は田に出たりしています。

2-3 バリ島は3つの暦で回っている

バリ島は大きく分けて三つの暦で回っています。

一つは西暦。行政や普段の生活ではもちろん西暦が使われます。
しかしバリヒンドゥー教のウパチャラ(祭事)では、ウク暦とサカ暦が使われます。

ウク暦は210日が一年。つまり30週が一年です。ウク暦は週が重要。30週それぞれの週に意味があります。
210日に一度のガルンガン、クニンガンの日はウク暦によるので、曜日が決まっています。

サカ暦は月の満ち欠けを一月とするので、一月が29日だったり30日だったりするので、一年が365日とならなくなり、調整が入るのでカレンダーを見ないとサカ暦のウパチャラの日はわかりません。

この二つの暦にによって、ウパチャラが執り行われます。
そのため、バリのカレンダーは必需品。

これが無いと生活が成り立たないと言っても過言ではありません。
もちろん我が家にも有ります。
このカレンダーが無いと、バリ島独自の祭日がわかりません。大きなウパチャラの時はお店も閉めるところが多いし、学校も役所もお休み。もちろんバリ島だけです。

これがバリのカレンダー。
赤い字はインドネシアの祭日。
赤い丸で囲んであるのが、バリヒンドゥー教のウパチャラの日。バリ島独自の休日になります。
カレンダーを見るとわかりますが、ほとんど毎日何らかの祭日や祭日の準備のための日。
小さな字で書いてあるのが、バリヒンドゥー教の祭事やその準備を始める日。

そういえば日本にも暦、有りますよね。
日本の冠婚葬祭や節季は六曜によって決まることが多いですが、その時に暦を使います。
この辺りも日本とバリ島は似ています。

もちろんバリ人は暦の全てのウパチャラをするわけではありません。そんなことをしていたら、働くこともできません。
家族やカースト、職業によって重要なウパチャラは変わります。

3 バリ人の家寺、サンガ

これが我が家のサンガ、家寺です。
オーナーがバリヒンドゥー教徒の借家には必ず有ります。

この写真はサンガのウパチャラのオダランの時の写真です。

我が家は借家なので質素なサンガですが、家によっては立派なものもあります。
サンガは北東の角、アグン山の方角に建てられます。

3-1 お祈りに欠かせないチャナンとお香

毎日のお祈りや、ウパチャラの時の供物。バンタンと言います。
バンタンは祭日によって、家によって形や種類が違います。
疫病退散のバンタンもあって、今回の新型コロナウイルスでうちのバンジャールからも指示が有り用意してお祈りをしました。

これはあるお店の日常のバンタンを作っているところ。その中の花で作られた供物をチャナンサリといいます。
このように手作りする家もありますが、最近は買ってくる家も多いです。

このチャナンサリをサンガや敷地の決められた所に置き、線香を焚いてお祈りします。
我が家もサンガや井戸などの8箇所でお祈りしています。

3-2 ウパチャラに参加しよう!

とにかくウパチャラが多いバリ島。
ウパチャラに適した時期はバリ人は大忙し。
結婚式に良い日、火葬式に良い日などもあるので、そんな日はバリ人もお坊さんも走り回ります。

もちろん曜日は関係ないので、ウパチャラがあれば仕事は休み。会社員であっても、ウパチャラが理由なら誰も文句は言えません。
でも正社員が少ないバリ島。ウパチャラの多い時期はお金もかかるけど、給料も少ないということになります。
なかなか大変。

そんなウパチャラ。
もし誘われたら是非参加してみてください。
時間通りに始まらなかったり、待ち時間が長かったりで、実際私達も誘われたらちょっと気が重くなったりもします。

でも、みんなで祈りを一つにした時の清々しさは、言葉では言い表せません。
あの空気を経験したら何度でも参加したくなります。

ウパチャラは、家族や縁のある人が集まり近況を話したり、コミニュティの一体感を感じ、祈りを一つにする事も目的の一つなのかもしれません。

お祈りの仕方や色々なことはみんなが寄ってたかって教えてくれます。
何の心配もいりませんよ。

まとめ

バリ島は宗教を抜きには成立しません。バリヒンドゥー教は時代に沿って変化してきました。これからも、色々なものを取り込みながら変わっていくでしょう。

しかしそれでも、経済や観光のためだけに形骸化することはなく、人々の生活の根幹であり続けていくはずです。バリ島は今日もどこかで祈りが捧げられています。

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